優れた人間の
チームを
いくつもつくって、
彼らに夢を
実現させてみせる。
「新たな製品を考案し、小グループに情熱を吹き込み、将来の夢を語ら
せたら、スティーブの右に出るものはいないだろう。しかし、10億ドル企業
の経営となればどうだろう。答えは否だ」とは、長年アップル取締役会の
メンバーを務めたフィル・シュラインの若き日のジョブズ評だ。
ジョブズには誰もが認める才能があった。それは会社の経営ではなく、有能な
少人数のグループを率いて宇宙に衝撃を与えるほどの独創的なものをつくる力だった。
なぜ、少人数なのか。それは、企業が大きくなると、何層もの中間管理層が
組み込まれるからだ。管理者は保守を好み、創造を陰に陽に妨げる。創造力あふ
れた人間は嫌気がさし、会社を去ってしまう。
「後ろに残るのはごくごく普通の人たちという始末になるんだ。そんな味も
素っ気もない企業にしたくないのなら、優れた人間たちの小さなチームを
いくつもつくって、それをまとめ、彼らに思い切り夢を実現させてみたらいいのさ。
僕たちはエンジニアじゃなくて、アーティストなんだから」
ジョブズは、大企業は醜いものだと嫌い、自分自身も単なるビジネスマン
になりたくないと思っていた。目ざしていたのはアーティスト的なエンジニアが、
創造力をフルに発揮できる革新的な企業だった。しかし、そんなアップルも成長
するにつれ、大企業への道を歩み始めていく。
ー 出典「1分間スティーブ・ジョブズ」